60歳から65歳までの無年金期間をどう埋めるか

公開日:2026年8月3日著者:マサル

今の職場に入った時点で、60歳になったら絶対に辞めたいと思っていました。

当時考えていたのは、退職金で65歳までどうにかすること。定年が60歳で、年金が始まるのは65歳なので、5年間の生活費を退職金から出せばいい。そのくらいの感覚でした。

シミュレーターを作ってみると、問題は5年分の生活費だけではありませんでした。給与がなくなっても、健康保険料や税金、毎日の支出は続きます。資産から毎年いくら出ていくのかを見ると、想像していたより重い5年間でした。

60歳で交代勤務を辞め、資産を取り崩しながらパートで65歳までつなぐ様子

何が起きる5年間なのか

会社を辞めると、それまで給与から天引きされていた健康保険料などを、自分で手続きして払うことになります。

60歳より前に辞める場合は、原則として60歳まで国民年金保険料も必要です。60歳で辞めた後の国民年金は義務ではありませんが、加入期間が480ヶ月に足りなければ任意加入を選べます。健康保険は、国民健康保険へ移るか、会社の健康保険を任意継続するかなどを選ぶことになります。

年金が始まるまでは、働かなければ収入はありません。生活費を退職金だけで出すなら、5年間ずっと残高が減っていきます。

当サイトのシミュレーターで完全FIREの到達年齢が最も遅く出るのも、主にこの5年をすべて資産で埋める必要があるためです。

任意加入という選択肢

ここで使えるのが、60歳から65歳までの任意加入です。

老齢基礎年金は480ヶ月納めて満額になります。学生納付特例を追納しなかった期間や、転職の合間の空白期間があると、480ヶ月に足りません。その不足分を、60歳以降に納めて埋められる制度です。

仮に60ヶ月分(5年分)が不足していて、それを全部埋めるとどうなるか計算してみます。

払う額 月17,920円 × 60ヶ月 = 1,075,200円

増える年金 70,608円 × 60/480 = 月8,826円 → 年105,912円

約107万円払って、年10.6万円が増える。単純に割ると、10.1年で元が取れる計算になります。65歳から受け取り始めれば、75歳を超えたところから先は上乗せということになります。

自分なら、資金に余裕があれば任意加入を使いたいです。約10年受け取れば払った分に届くなら、長生きしたときの備えになります。ただし、この計算には保険料の社会保険料控除や、払わずに運用した場合の利益を入れていません。あくまで単純比較です。

ただし条件が一つあります。**60歳以降も厚生年金に加入して働いている場合、任意加入はできません。**再雇用で働き続けるつもりなら、この選択肢は使えないことになります。逆に、任意加入を使いたいなら働き方の方を調整する必要が出てきます。

出口の設計に関わる話なので、追納の期限を過ぎてしまった方は、ここを一度確認しておく価値があると思います。追納の期限については学生納付特例を追納しないと、年金は生涯でいくら減るのかに書きました。

繰下げ受給という別の考え方

もう一つ、受給を後ろにずらす選択肢もあります。

繰下げは1ヶ月あたり0.7%増えます。

受給開始 増える割合
65歳
70歳 42%増
75歳 84%増

70歳まで繰り下げれば42%、75歳まで待てば84%増えます。かなり大きな数字です。

ただし、繰り下げている間の生活費は資産から出すことになります。つまり繰下げは「資産を前倒しで取り崩して、年金を買い増す」のに近い選択です。無年金期間を5年から10年に延ばす、と言い換えることもできます。

年金額には、賃金や物価の変動に応じて毎年度改定する仕組みがあります。ただし、物価が上がった分だけ必ず増えるわけではありません。

2026年度は物価変動率が3.2%だったのに対し、老齢基礎年金の引き上げは1.9%でした。マクロ経済スライドなどの調整があるためです。繰下げで受取額を増やしても、将来の購買力まで保証されるわけではありません。

自分は、いつ死ぬか分からないなら65歳から先にもらいたいです。70歳まで待てば42%増えると分かっていても、5年間受け取らない方が気になります。最大額を狙うより、受け取れる年齢になったら受け取りたい。今のところはそう考えています。

5年をどう埋めるか

整理すると、選択肢はおおむね次のようになります。

どれか一つを選ぶというより、組み合わせる形になると思います。

自分の場合、再雇用されてもほぼ確実に交代勤務です。何らかのFIREができると分かった今では、再雇用を選ぶつもりはありません。

とはいえ、60歳からまったく働かないと決めたわけでもありません。交代勤務を続けるのではなく、パートで気楽に働きたいです。月10万円でも生活費を補えれば、退職金や運用資産の減り方は変わります。「働くかどうか」ではなく「どう働くか」の問題だと、途中から思うようになりました。

社保付きのパートと個人事業では、同じ月10万円でも保険料が変わります。詳しい差はバリスタFIREで配偶者の保険料がゼロになる仕組みに書きました。

計算上は資産が足りていても、実際に口座残高が毎年減っていくのを見たら、どんな気持ちになるのか。今はまだ分かりません。数字より、そちらの方が不安です。少し働くことは生活費を稼ぐためだけでなく、資産を取り崩す怖さを和らげるためにもなる気がしています。

60歳から65歳をどう埋めるかで結果がどれだけ動くか、4種類のFIREの到達年齢を並べて見てみてください。この5年の扱いが、4つの差の大きな部分を占めていることが分かります。

参考にした公的資料

なお、任意加入や繰下げの可否には個別の条件があります。ここに書いたのは基本的な形なので、実際の手続きの前にねんきんネットまたは年金事務所でご確認ください。運営者は年金の専門資格を持つ者ではありません。

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