学生納付特例を追納しないと、年金は生涯でいくら減るのか

公開日:2026年8月4日更新日:2026年8月21日著者:マサル

シミュレーターを作るまで、学生納付特例は「学生の間は国民年金を払わなくてよくなる制度」くらいに思っていました。

でも、正確には免除ではなく支払いの猶予です。承認された期間は未納扱いにならず、年金を受け取るために必要な期間には入ります。ただし、後から追納しなければ老齢基礎年金の金額には反映されません。

では、大学生の20歳から22歳まで、2年間を追納しなかったら実際にいくら減るのか。令和8年度の年金額で計算してみました。

2年間追納しないと、月約3,530円減る

令和8年度の老齢基礎年金は、満額で月70,608円です。20歳から60歳までの40年間、合計480か月納めると満額になります。

年額にしてから1か月分を計算すると、こうなります。

70,608円 × 12か月 ÷ 480か月 = 1,765.2円

国民年金を1か月納めるごとに、老齢基礎年金の年額が約1,765円増える計算です。学生納付特例の24か月分を追納しなければ、年金の年額は約42,365円少なくなります。

令和8年度の金額で試算 月額 年額
480か月納付 70,608円 847,296円
24か月分を追納しない 約67,078円 約804,931円
差額 約3,530円 約42,365円

月3,530円だけを見ると、想像より少ないと感じるかもしれません。自分も「これなら追納してもしなくても、あまり変わらないのでは」と思いました。

ただ、年金は生きている間ずっと続きます。65歳から25年間、90歳になる頃まで受け取るなら差額は約106万円です。何歳まで生きるかは分からないので、「生涯で必ず106万円減る」という意味ではありません。それでも、月額だけで見るより影響は大きく感じます。

年金額と計算の前提は、日本年金機構の令和8年度の年金額学生納付特例制度の説明で確認できます。

追納費用は、だいたい何年で取り戻せるのか

次に、払う金額と増える年金を比べます。

追納額は、学生だった年度と追納する年度によって違います。たとえば令和8年度中に追納する場合、令和4年度分は月16,990円、令和5年度分は月16,770円です。この2年度を12か月ずつ追納する例なら、合計は約40万5,000円になります。

16,990円 × 12か月 + 16,770円 × 12か月 = 405,120円

追納によって増える年金は年約42,365円なので、単純に割ると約9.6年です。65歳から受け取り始めるなら、75歳になる前後で支払額に届く計算になります。

ただし、これは令和8年度の年金額がそのまま続くとして比べた概算です。実際の年金額は毎年度改定されますし、税金や運用できたはずのお金まで含めると結果は変わります。一方で、追納した保険料は社会保険料控除の対象になるため、所得がある年に払えば税負担が軽くなる場合もあります。

日本年金機構の追納制度のページには、その年度に追納する月額と社会保険料控除について掲載されています。自分の正確な追納額は、この表だけで決めず、年金事務所に確認した方が確実です。

追納するかは、老後の損得だけでは決めにくい

数字だけなら、長く受け取るほど追納した方が有利になりやすいです。それでも、就職したばかりの時期に40万円前後を払うのは軽くありません。

生活防衛資金がほとんどないのに追納を優先すると、急な出費で困るかもしれません。奨学金の返済や金利の高い借入がある人も、先にそちらを整理した方がよい場合があります。反対に、手元資金に余裕があり、将来の終身収入を少しでも増やしたい人には追納が選択肢になります。

自分なら、まず生活に必要な現金を残せるかを見ます。そのうえで、追納した場合と、そのお金を貯金や積み立てに回した場合を比べます。「追納は得か損か」だけではなく、今の安心を削りすぎないことも大事だと思うからです。

なお、日本年金機構が公表した令和7年度末の資料では、10年目を迎えた学生納付特例期間の追納率は9.6%でした。約9割は追納されていない計算です。追納する人が少ないから不要、という意味ではありませんが、卒業後にまとまった金額を払う難しさは数字にも出ていると思います。出典は第84回社会保障審議会年金事業管理部会の資料(PDF・28ページ)です。

10年の期限と、3年度目からの加算に注意

学生納付特例の期間を追納できるのは10年以内です。ただし「卒業してから10年」と一括で数えるのではなく、追納する月からさかのぼって10年以内の月分が対象になります。古い月から順に期限が来るので、ぎりぎりまで待つ場合は注意が必要です。

また、承認を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が上乗せされます。10年以内なら同じ金額で払える、というわけではありません。

期限を過ぎても、60歳以上65歳未満で厚生年金などに加入していない人は、国民年金の任意加入で納付月数を増やせる場合があります。ただし、過去の学生期間をそのまま追納する制度ではありません。条件は日本年金機構の任意加入制度で確認できます。

まずは「学特」が何か月あるか確認する

ねんきんネットでは、月ごとの年金記録を確認できます。学生納付特例を受けた月は「学特」と表示されるので、まず何か月あるのかを見てください。

当サイトのかんたん入力では、大卒の場合、20歳から22歳までの学生納付特例を追納していない前提にしています。これは追納率の低さに合わせた初期設定です。実際に追納している人や、学生期間が2年ではない人は、詳しい入力で国民年金の加入月数を直してください。

追納しない期間がFIRE後の資産にどの程度響くかは、年金FIREシミュレーターで確認できます。月3,530円の差だけを見るのではなく、老後までの資産推移に入れて比べると判断しやすくなります。

シミュレーターで自分の数字を試す →