バリスタFIREで配偶者の保険料がゼロになる仕組み

公開日:2026年7月27日更新日:2026年8月23日著者:マサル

バリスタFIREを知る前は、洗車やコーティングの店をやるつもりでした。趣味としてかなりハマり、遠方まで修行に行ったこともあります。本業をやめた後は、好きな作業で生活費を稼げたらいい。そんな考えでした。

ただ、店を続けるには洗車の腕だけでは足りません。集客や経理も自分でやる必要があります。自分が不安だったのは、むしろそちらでした。

洗車・コーティングの個人事業と社保付き短時間勤務を比べる様子

その後、社保付きのパートで不足分を稼ぐ「バリスタFIRE」を知りました。同じ月10万円でも、個人事業で稼ぐのか、給料として受け取るのかで結果が変わります。

最初は、厚生年金が増えるからだと思っていました。年金についてほとんど調べていなかったし、正直、厚生年金にも期待していませんでした。計算を分けてみると、到達年齢に効いていたのは年金よりも、現役中の保険料でした。

同じ月10万円でも、手元に残る額が違う

夫婦が同い年で2人とも60歳未満、配偶者は扶養に入れるものとして比べます。国民健康保険は自治体や前年所得で変わるため、ここではシミュレーターの初期値である月2.5万円を置きました。

月額 サイドFIRE(個人事業) バリスタFIRE(社保付き給与)
収入 10.0万円 10.0万円
国民年金 −3.58万円(夫婦2人) 給与天引きに含む
国民健康保険 −2.5万円 0円
給与からの天引き 0円 −1.5万円
保険料を引いた後 約3.9万円 約8.5万円

令和8年度の国民年金保険料は1人月17,920円。2人で35,840円です。

バリスタ側の1.5万円は、厚生年金、健康保険、雇用保険などで額面の約15%が引かれるという、このシミュレーターの概算です。本人の社会保険料までゼロになるわけではありません。本人は給与から負担し、条件を満たす配偶者の保険料負担が増えない、という仕組みです。

差は月45,840円。丸めると約4.6万円になります。

この表には、所得税、住民税、個人事業の必要経費を入れていません。月10万円なら年間収入は120万円です。「基礎控除の範囲だから10万円がそのまま残る」とは限らないので、実際の手取り表ではなく、シミュレーター内の保険料比較として見てください。

退職直後の国民健康保険は、前年の本業収入の影響で高くなる場合もあります。月2.5万円は誰にでも当てはまる相場ではありません。詳しい入力では、自分の自治体で試算した額に変えられます。

ゼロになるのは配偶者の負担。ただし条件がある

社保付きの勤め先で働く本人は、厚生年金の第2号被保険者です。扶養される配偶者が20歳以上60歳未満なら、条件を満たすことで第3号被保険者になり、国民年金保険料を個別に納める必要がありません。日本年金機構の第3号被保険者の説明では、原則として年収130万円未満などが要件になっています。

健康保険の被扶養者も、保険料を別に払う必要はありません。ただし、年収130万円未満で、原則として被保険者の年収の半分未満といった認定条件があります。60歳以上は年収180万円未満が基準です。収入だけで自動的に決まるわけではなく、最終的には勤務先を通じて確認します。被扶養者の認定条件(日本年金機構)

配偶者自身が勤務先の社会保険に入る条件を満たす場合は、年収130万円未満でも第3号にはなりません。記事タイトルの「ゼロ」は、配偶者が扶養条件を満たす場合の話です。

厚生年金は12年働いて月約6,400円増える

では、月10万円のパートを12年続けると、厚生年金はいくら増えるのか。

令和8年度の厚生年金保険料額表では、月10万円の給与は標準報酬月額9.8万円の等級です。報酬比例部分を計算すると、こうなります。

98,000円 × 5.481/1000 × 144ヶ月
= 年77,349円
= 月約6,446円

12年働いて月約6,400円。最初に見たときは、想像より少ないと思いました。これなら、やってもやらなくても大差ないのでは、と。

65歳から90歳まで25年間受け取ると仮定すれば、単純計算で約193万円です。将来の改定や税金を無視した数字ですが、ゼロではありません。

それでも、60歳までの保険料差は月約4.6万円です。仮に48歳から60歳まで12年間なら約660万円。バリスタFIREが早く出やすい主因は、老後に増える年金より、現役中の家計から出ていく保険料の差でした。

今回、シミュレーター側も計算を直しました。本業をやめた後の厚生年金は、本業時代の平均報酬ではなく、入力したパート給与の標準報酬で年ごとに積み上げます。

60歳を過ぎると月4.6万円の差は残らない

国民年金保険料を納めるのは原則60歳までで、第3号被保険者も20歳以上60歳未満が対象です。60歳になると、夫婦2人分の国民年金35,840円という差は消えます。

シミュレーターでは、バリスタFIREの給与と社会保険を69歳まで、70歳からは働かない前提にしています。60〜69歳の比較は次のとおりです。

月額 サイドFIRE バリスタFIRE
国民年金 0円 0円
国民健康保険 −2.5万円 0円
給与からの天引き 0円 −1.5万円
バリスタ側の差 約1.0万円

60歳より前に本業をやめるほど、月4.6万円の期間が長くなります。到達年齢が60歳付近なら、サイドFIREとの差が小さいのも自然です。

初期値で資産だけ変えると何歳になるか

現在40歳、本人年収460万円、年間積立60万円、住居費込みの生活費月28万円、FIRE後の収入月10万円、実質利回り3%という画面の初期値を使いました。子供はいない設定で、資産だけを変えています。

現在の資産 バリスタFIRE サイドFIRE
350万円 60歳 60歳
500万円 59歳 60歳
1,000万円 56歳 57歳
2,000万円 52歳 53歳

初期値では、資産350万円だと同じ60歳です。資産が増えて60歳より前に届くようになると、バリスタが1年ほど先に出ました。これは運営者本人の家計ではなく、比較用のモデルです。生活費や国保を変えれば結果も動きます。

社保付きなら、どのパートでもいいわけではない

短時間労働者が社会保険に入る条件は、2026年8月時点では次のとおりです。

月8.8万円の賃金要件は2026年10月に撤廃予定です。企業規模要件も、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上へ段階的に広がり、2035年10月に撤廃される予定です。厚生労働省の適用拡大の説明

制度が広がっても、求人票に「社会保険完備」と書いてあるだけで判断せず、自分の契約時間で加入対象になるかは確認した方がよさそうです。

求人を見るときは、まず勤務時間

以前は、洗車やコーティングの個人事業一本で考えていました。社会保険の差を知ってからは、社保に入れるパートやアルバイトでもいいと思うようになりました。休みが増えて、副業もできる環境なら、雇われる働き方でも欲しかった自由は得られます。

理想は週3日です。週20時間を満たすなら、1日あたり約6時間40分。1日の勤務時間をもっと短くしたければ、勤務日数を増やす必要があります。

求人を見る順番は、勤務時間、通勤距離、社会保険に入れるか。その次に、副業ができるかです。交代勤務、休日出勤、残業を当てにする給与体系には戻りたくありません。本業をやめたいのは、単に働きたくないからではなく、生活の時間を自分で決めたいからです。

洗車やコーティングを仕事にする道を捨てたわけでもありません。社保付きの短時間勤務を土台にして、休みの日に好きな仕事をする。その方が、いきなり店一本で食べていくより自分には合っている気がします。

シミュレーターでバリスタFIREとサイドFIREを比べる。国民健康保険を自分の地域の金額へ変えると、どちらが先になるかも変わります。

ここに書いたのは、公表制度と一定の前提を使った試算です。健康保険の扶養認定や実際の手取りは、勤務先、加入する健康保険、自治体、本人と配偶者の収入で変わります。仕事を決める前には、勤務先や年金事務所などで確認してください。

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