老齢基礎年金と厚生年金の計算式を手で解く
ねんきん定期便は毎年届きますが、中身をちゃんと見たのは去年が初めてでした。見込み額だけ見ても、なぜその金額になるのか分からない。そこが気持ち悪くて、計算式から追ってみました。
最初は難しそうに見えましたが、自分のように平成15年4月以降の加入期間だけで考えるなら、使う式はそれほど多くありません。
たとえば、平均年収500万円で40年間会社員として働き、国民年金にも480か月加入した人なら、令和8年度の金額で月約16万2,000円。税金や社会保険料が引かれる前の概算です。
どうしてこの金額になるのか、順番に計算します。
1階部分の老齢基礎年金
令和8年度の老齢基礎年金は、満額で月70,608円、年額847,296円です。原則として20歳から60歳までの40年間、合計480か月をすべて納めると満額になります。
保険料を全額納めた月だけで単純計算するなら、式はこうです。
老齢基礎年金の年額 = 847,296円 × 納付月数 ÷ 480か月
1か月分が年金月額に与える差は約147円です。年額で見ると約1,765円。24か月足りなければ、月額は約3,530円少なくなります。
70,608円 ÷ 480か月 = 147.1円
学生納付特例や納付猶予は、追納しなければ年金額には反映されません。保険料免除の期間は少し扱いが違い、全額免除でも一定割合が年金額に反映されます。自分の記録に免除期間がある場合は、単純に「480か月から引く」だけでは正確に出ません。
基礎年金額と正式な計算方法は、日本年金機構の老齢基礎年金の説明で確認できます。
18歳から働いた2年間はどうなるのか
高卒で18歳から会社員になれば、その時点から厚生年金に入ります。ただし、老齢基礎年金の計算に入る第2号被保険者の期間は、原則として20歳以上60歳未満です。18歳と19歳の期間は、厚生年金の加入月数には入りますが、基礎年金の480か月には入りません。
ここは自分も勘違いしやすかったところです。18歳から働いた人の基礎年金が、自動的に2年分少なくなるわけではありません。20歳から60歳までの480か月が埋まっていれば、基礎年金は満額です。
20歳前や60歳以降の厚生年金期間がある人には「経過的加算」が付く場合もあります。当サイトのシミュレーターはこの加算を計算していないため、その期間が長い人は実際の年金額と差が出る可能性があります。日本年金機構の令和8年度版・老齢年金ガイド(PDF)にも計算の考え方が載っています。
2階部分の老齢厚生年金
平成15年4月以降の厚生年金の報酬比例部分は、次の式で概算できます。
老齢厚生年金の年額 = 平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1,000 × 加入月数
平均標準報酬額は、今の月給でも最後の給料でもありません。加入期間中の標準報酬月額と標準賞与額を合計し、加入月数で割った金額です。過去の報酬には、現在の価値に直すための再評価率も使われます。
つまり、本当の平均標準報酬額を給与明細だけで正確に出すのは難しいです。この記事では分かりやすさを優先し、賞与込みの平均年収を12で割った金額を概算値として使います。
正式な定義と計算式は、日本年金機構の報酬比例部分の説明と平均標準報酬額の説明で確認できます。
平均年収500万円で40年働いた例
ここでは次の条件を置きます。
- 賞与込みの平均年収は500万円
- 平均標準報酬額は500万円÷12か月で概算
- 平成15年4月以降に40年間、480か月加入
- 基礎年金も480か月で満額
- 65歳から受給し、繰上げ・繰下げはしない
まず、平均年収を月額へ直します。
500万円 ÷ 12か月 = 約416,667円
この金額を厚生年金の式へ入れます。
約416,667円 × 5.481 ÷ 1,000 × 480か月
= 年額1,096,200円
月額は91,350円です。満額の基礎年金を足すと、合計は月161,958円になります。
基礎年金70,608円 + 厚生年金91,350円
= 月161,958円
計算できると、「月16万円くらい」という結果だけを見るより納得しやすくなりました。年収が同じでも加入期間が短ければ減り、40年働いても生涯の平均報酬が低ければ減る。今の年収だけでは決まりません。
平均年収別に並べるとどうなるか
同じ条件で、平均年収だけを400万円、500万円、700万円に変えました。
| 賞与込みの平均年収 | 基礎年金(月額) | 厚生年金(月額・概算) | 合計(月額・概算) |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 70,608円 | 73,080円 | 143,688円 |
| 500万円 | 70,608円 | 91,350円 | 161,958円 |
| 700万円 | 70,608円 | 127,890円 | 198,498円 |
平均年収が400万円から700万円へ300万円上がると、厚生年金の差は月約5万4,800円です。平均年収がそのまま平均標準報酬額になると仮定した比較なので、実際の標準報酬の等級や賞与の出方によって金額は変わります。
令和8年8月時点では、厚生年金の標準報酬月額の上限は65万円です。賞与は別に標準賞与額として計算され、厚生年金では1か月150万円が上限です。標準報酬月額の上限は、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に上がることが決まっています。詳しくは厚生労働省の上限引上げの説明と日本年金機構の標準賞与額の説明を確認してください。
平成15年3月以前の期間は式が違う
平成15年3月以前に厚生年金へ加入していた人は、期間を分けて計算します。
平成15年3月以前
平均標準報酬月額 × 7.125 ÷ 1,000 × 加入月数
平成15年4月以降
平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1,000 × 加入月数
前半は賞与を含まない「平均標準報酬月額」、後半は賞与を含む「平均標準報酬額」です。過去の制度との比較による従前額保障や、生年月日によって異なる乗率もあるため、この期間をまたぐ人が手計算だけで正確な金額を出すのはかなり大変です。
当サイトのシミュレーターは、すべて平成15年4月以降の5.481/1,000で簡略計算しています。平成15年3月以前の加入期間がある人は、実際より低く出る可能性があります。
自分の数字は、ねんきんネットを基準にする
手計算は、年金額が何で増減するのかを知るには便利でした。ただ、正確な見込み額を出すならねんきんネットを使った方が早いです。加入月数、各月の標準報酬月額、標準賞与額、現在の記録を使った年金見込み額を確認できます。
当サイトのかんたん入力は、現在の年齢と年収から生涯の平均標準報酬額を推定します。実際の加入月数と平均標準報酬額が分かる人は、詳しい入力へ直接入れた方が現実に近づきます。
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