介護施設の費用は月いくらか。特養と有料老人ホームの違い

公開日:2026年7月30日更新日:2026年8月21日著者:マサル

老後の試算を組んでいて、一番置き方に迷ったのが介護施設の費用でした。「月15万円」という数字はよく見かけます。ただ、その15万円に何が含まれているのかを調べ始めると、施設の種類だけでなく、本人の所得や要介護度、部屋、地域でも請求額が変わることが分かりました。

以前のこの記事では、特養を「月13〜15万円で介護費込み」、サ高住を「月15万円で介護費なし」と書いていました。これは分け方が大ざっぱすぎました。特養でも介護保険の自己負担はありますし、サ高住のなかには介護サービスを一体で提供する指定を受けた住宅もあります。

自分は金融や介護の専門職ではありません。ここでは祖母の介護を身近で見た経験と、厚生労働省、国土交通省、消費者庁が公表している資料をつないで、自分の資産試算にどう置いたかを書きます。

「月15万円」の中身を先に見る

介護保険サービスを使ったときの本人負担は、原則として費用の1割、一定以上の所得がある人は2割または3割です。施設に入れば、この自己負担に加えて、居住費、食費、日常生活費などがかかります。所得や資産が一定以下の人向けの食費・居住費の軽減や、介護サービスの自己負担が高くなったときの上限もありますが、居住費や食費まで同じように上限内へ収まるわけではありません。仕組みは厚生労働省の「サービスにかかる利用料」で確認できます。

施設の広告にある月額だけでは、総額を比べられません。まず請求書の項目に分けると、違いが見えやすくなります。

種類 毎月かかるもの 金額が変わる主な理由
特別養護老人ホーム(特養) 施設サービスの自己負担+居住費+食費+日常生活費など 所得による1〜3割負担、要介護度、従来型・ユニット型などの居室、地域区分、加算、食費・居住費の軽減対象かどうか
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 家賃+共益費+状況把握・生活相談の費用。食事などは契約による。介護保険サービスの自己負担が加わることがある 地域と部屋、選ぶ生活支援、使う介護サービスの量。「特定施設」の指定を受けた住宅かどうか
住宅型有料老人ホーム 家賃相当額+管理費+食費など。必要に応じて外部の訪問介護などを契約 入居プラン、地域、部屋、介護サービスの種類と回数、要介護度、所得による1〜3割負担
介護付き有料老人ホーム 家賃相当額+管理費+食費などに、施設が包括的に提供する介護保険サービスの自己負担を足す 入居プラン、地域、要介護度、所得による1〜3割負担、職員配置などの加算、保険外サービス

たとえば特養について、厚生労働省の介護サービス情報公表システムに載っている1割負担の例を見ると、要介護3の施設サービス費は1日732円または815円です。従来型かユニット型かで違い、要介護4、5になると金額も上がります。これは介護サービス部分だけの例で、居住費、食費、日常生活費、各種加算は別です。2割・3割負担の人もいます。「特養は全部込みで月いくら」と一つの数字にするのは無理がありました。

サ高住は介護施設というより、高齢者向けの住まいです。国土交通省・厚生労働省のサ高住の案内では、必須なのは状況把握と生活相談で、食事、清掃、洗濯などは住宅ごとに違います。介護保険サービスも入居者が必要なものを選ぶのが基本です。ただし、住まいと介護を一体で提供する「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたサ高住もあります。だから「サ高住の15万円には介護費が入らない」とも一律には言えません。

有料老人ホームも二つに分かれます。厚生労働省の有料老人ホームの類型によると、住宅型は外部の訪問介護などを本人が契約し、介護付きはホームが包括的に介護保険サービスを提供します。それでも、介護付きの広告にある家賃・管理費・食費だけで支払いが終わるとは限りません。特定施設入居者生活介護の利用者負担は要介護度で変わり、入居費用や日常生活費も別に必要です。

特養は原則要介護3以上

費用を抑えやすい施設として特養を考える人は多いと思います。ただ、希望した時点ですぐ入れるとは限りません。

新たに特養へ入る人は、原則として要介護3から5が対象です。要介護1、2でも、認知症で日常生活に支障がある、家族による支援が期待できず地域のサービスも足りない、といった事情があれば特例入所の対象になり得ます。厚生労働省の特養の入所指針には、虐待が疑われる場合なども含めて判断材料が示されています。要介護1、2なら一律に申し込めない、という意味ではありません。

要介護3になれば自動的に入れるわけでもありません。施設は申込者のうち、入所の必要性が高い人を優先して決めます。空き状況は地域と施設で違うので、待つ間は在宅サービスを使う、サ高住や有料老人ホームを探す、家族で介護する、といった別の期間が生じることがあります。

自分の試算では、最初から最後まで一つの施設、一つの月額で進むとは考えないことにしました。要介護度が軽い時期、特養を待つ時期、入所後で支出が変わる可能性を残しています。

在宅介護から高齢者向け住宅を経て介護施設へ移る流れ

在宅介護、サ高住・有料老人ホーム、特養へと移る場合の一例。全員がこの順番になるわけではありません。

祖母は施設費が足りず、最期まで自宅だった

祖母の介護は、母が自宅でしていました。食事、通院、入浴、排せつ、見守り、手続き。ほとんど全部です。自分が手伝ったのは、母の代わりに留守番をしたり、祖母が通所型の施設へ行くときに見送ったり、帰ってくる時間に迎えたりするくらいでした。

当時の母は、こちらから見ると普通の顔をしていました。だから自分も、そこまで深刻に考えていなかったのだと思います。今になって振り返ると、体力も時間も削られていたはずです。一番大きかったのは、精神的な負担だったのではないかと思っています。

家で介護するにも準備がいりました。階段、トイレ、玄関に手すりを付け、車いすや介護ベッドも必要になりました。施設に払う月額がなくても、介護費用がゼロになるわけではありません。通所介護や訪問介護などを使えば、ここでも介護保険の自己負担が生じます。介護する側が仕事を減らした場合は、請求書に出ない収入減もあります。

施設への入居も検討しました。ただ、費用が全然足りず、祖母は亡くなるまで家で介護を受けました。この経験があるので、自分の老後では、早めに施設へ入る選択肢を持っておきたいと思っています。配偶者だけに任せるのではなく、お金で解決できる部分はできるだけお金で解決したいです。

今の自分にとって施設費は、快適な部屋を買うためだけのお金ではありません。介護を一人の家族へ集中させないためのお金でもあります。月額だけでなく、誰の時間と体力で足りない部分を埋めるのかまで考えないと、祖母のときと同じ形になりそうです。

一時金100万円も固定の相場ではない

月額とは別に、入居時にまとまった支払いが必要なことがあります。有料老人ホームには、家賃などを前払いする方式、月払い方式、両方を組み合わせる方式があります。厚生労働省の有料老人ホームの費用の読み方でも、償却期間と退去時の返還額を契約前に確かめるよう案内しています。サ高住で受け取れるのは敷金、家賃・サービスの対価で、前払金を受け取る場合は算定根拠、返還額の計算方法、保全措置を示す決まりがあります。名称が「入居一時金」でも、何の代金なのか、退去時にいくら戻るのかは契約書を見ないと分かりません。

当サイトのシミュレーターでは、入居時の一時金を100万円で仮置きしています。全国共通の平均や上限ではなく、入居した年にまとまった支出が出る影響を見るための初期値です。0円にも、もっと大きな額にも変えられます。

取り崩しを始めた直後に100万円を払うと、その後の運用に回せる元本が減ります。月額の合計が同じでも、一時金をいつ払うかで資産の残り方は変わります。施設を比べるときは、月額に加えて、前払金、償却期間、短期間で退去した場合の返還額まで確認した方が、試算へ入れやすくなります。

身元保証人がいなくても、すぐ民間契約とは限らない

身元保証については、以前の記事に「特養の6.4%は保証人なしで入居でき、35.1%は条件付きで受け入れる」と書いていましたが、その数字を最新の公的資料で確かめ切れなかったため削除しました。

厚生労働省が2025年に改めて出した身寄りのない高齢者の受け入れに関する通知には、2017年度調査で、介護施設への入所時に本人以外の署名を求めていた施設が95.9%だったとあります。ただし、これは現在の入居率ではなく、当時の施設側の手続きに関する調査です。

同じ通知は、介護保険施設について、法令上は身元保証人を求める規定がなく、身元保証人がいないことだけを理由にサービスを拒むのは正当な理由に当たらない、と明記しています。現場で本人以外の署名を求める施設が多いことと、「保証人がいなければ法律上入れない」ことは別の話です。

施設が「身元保証人」「身元引受人」「連帯保証人」のどれを求めているのか、何をしてほしいのかも確認が必要です。緊急連絡、支払いの保証、入退院の手伝い、亡くなった後の荷物や遺体の引き取りでは、役割が違います。頼める親族がいないときも、まず地域包括支援センターや自治体へ相談し、使える制度や地域の支援を確認する順番になります。

民間の高齢者等終身サポート事業者へ身元保証、日常生活支援、死後事務をまとめて頼む方法もあります。ただ、長期契約になりやすく、料金体系も事業者ごとに違います。消費者庁の高齢者等終身サポート事業に関する注意点と事業者向けチェックリストでは、次のような確認を求めています。

「保証人がいないから今日契約しないと入れない」と急がされても、その場で決める話ではありません。不明点は地域包括支援センターのほか、契約の問題なら消費生活センターへ相談できます。関連する契約は子供がいない夫婦の老後に必要な3つの契約でも整理しました。

自分の試算では月15万円をどう使ったか

シミュレーターの施設費は、初期値を月15万円にしています。これも公的な平均額ではなく、将来の支出を計算するための調整可能な仮定です。住みたい地域の候補施設を調べ、18万円、20万円と入れ替えて結果を比べられます。

自分が考えた流れは、次のようなものです。

月18万円と14万円は自分の試算用の数字で、「サ高住なら18万円」「特養なら14万円」という相場ではありません。実際には所得、要介護度、部屋、地域、施設の加算で変わります。シミュレーターには施設費を一つの月額で入れるため、自分は期間全体の仮置きとして15万円を使い、別に18万円へ上げた場合も回しました。

祖母の介護でも、必要なものは後から増えていきました。施設へ入る前の在宅介護にも支出があり、入居した後も医療費や日用品が別にかかります。一つの金額を当てて終わりではなく、少なくとも低め・中間・高めの三通りを試す方が、自分には合っていました。

インフレ後の金額として試す

ここまでに出した金額は、今の物価で考えた仮定です。自分が介護を受けるのは何十年か先なので、実際の請求額はもっと大きな数字になっているかもしれません。

当サイトのシミュレーターは実質利回り、つまり運用利回りからインフレ率を引いた後の利回りで計算しています。入力する生活費や施設費も、今の価値でそろえる設計です。一般的な物価と同じペースで介護費が上がる分は、この考え方の中に入っています。

ただし、介護の人手不足や制度改定の影響で、施設費が一般的な物価より速く上がれば、その差までは自動で入りません。そこで施設費の入力欄を月15万円から18万円、20万円へ上げ、一時金100万円も200万円へ変えて、資産が尽きる年齢がどう動くかを見ます。どの数字が正解かを当てるより、前提が外れたときに家計がどこまで耐えられるかを見るためです。

候補を探す段階では、厚生労働省の介護サービス情報公表システムや、国土交通省のサービス付き高齢者向け住宅情報提供システムで、地域ごとの施設と費用を確認できます。広告の「月額」だけでなく、介護保険の自己負担、食費、居住費、加算、医療費、日用品、一時金を足してから比べる。祖母のときに自分ができなかった確認を、今のうちにやっておこうと思っています。

施設費と入居年齢を自分の想定に変えて、資産がどこまで持つかを見てみてください。介護と社会保険の想定は、入力欄の下の方で開けるようになっています。具体的に施設を探す段階になったら、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談してください。

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