夫婦の年齢差がFIRE年齢に与える影響

公開日:2026年7月28日更新日:2026年8月21日著者:マサル

老後の試算をしていて、途中から効き方の大きさに驚いた項目があります。夫婦の年齢差です。

資産や生活費が同じでも、配偶者の年金が入る年は変わります。介護施設へ入る年や、どちらか1人で暮らす年も、シミュレーターの置き方によって前後します。総額が同じなら結果も同じ、とはなりません。

ただし、「配偶者が年上なら年金が先に入るから得」とまでは言えません。年齢差だけを0歳、5歳、10歳と変えた仮想世帯を作り、何が動いているのかを確かめました。

配偶者の年金は、本人が何歳のときに始まるか

当サイトのシミュレーターは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を65歳から受け取る前提です。本人が40歳なら、配偶者の年金が始まる時期は次のようになります。

配偶者との年齢差 現在の配偶者年齢 配偶者が65歳になるときの本人年齢
0歳 40歳 65歳
5歳上 45歳 60歳
10歳上 50歳 55歳

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらも原則65歳からです。60〜64歳の繰上げや、66〜75歳の繰下げを選べるため、実際の開始時期は本人の選択でも変わります。制度上の開始時期は、日本年金機構の老齢基礎年金老齢厚生年金の説明で確認できます。

10歳上のケースでは、本人が55歳の時点から世帯に配偶者の年金が入ります。本人の年金が始まる65歳まで、片方の年金で資産の取り崩しを抑えられる期間が10年ある。この部分だけを見れば、年上の配偶者がいる世帯の方がFIREの計算は通りやすくなります。

年齢差だけを変えた独自試算

実際の運営者世帯の数字ではなく、比較用の仮想世帯です。本人は40歳・大卒・年収460万円、配偶者は大卒で扶養内に入る前の年収を300万円としました。資産1,000万円、年間積立120万円、FIRE後の生活費は月25万円、実質利回り3%。住宅ローンと教育費は入れず、FIRE後に働く場合の収入は月10万円です。

介護は1人あたり月15万円、入居一時金100万円。本人は85歳で施設入居・95歳まで、配偶者は85歳で施設入居・90歳までと置きました。これらを固定し、年齢差だけを変えてシミュレーターの計算処理で検算した結果です。

年齢差 コーストFIRE バリスタFIRE サイドFIRE 完全FIRE
0歳 43歳 51歳 53歳 56歳
5歳上 41歳 50歳 52歳 55歳
10歳上 41歳 49歳 51歳 54歳

この条件では、0歳差と10歳差で到達年齢が2年動きました。たとえば完全FIREは56歳から54歳です。先に入る配偶者の年金が、本人の年金開始までの支出を埋めたためです。

これは年上の配偶者がいる世帯なら必ず2年早まる、という結果ではありません。資産が少ない、生活費が高い、配偶者の年金額が小さいといった条件に変えれば、差が縮んだり、65歳までに到達できなかったりします。年齢差は有利・不利を決める答えではなく、入出金の順番を変える入力値でした。

介護と死別を「年齢差のせい」にしない

以前は、年上の配偶者は年齢差と同じだけ早く介護が必要になり、早く亡くなる、と読める書き方をしていました。これは言い過ぎでした。年齢差だけから介護の開始時期や寿命は決まりません。

シミュレーターでは、本人と配偶者それぞれに「施設入居年齢」と「想定寿命」を入力します。上の試算では配偶者の施設入居を85歳、寿命を90歳に固定しました。そのため、10歳上の配偶者は本人から見た年表の中で、同い年の配偶者より10年早くその設定年齢へ達します。これはシミュレーター上の仮定であって、年齢差が介護や死別を早めるという予測ではありません。

健康状態や家族歴を考えて別の年齢を置きたい場合は、「介護と社会保険の想定を変える」から個別に直せます。年齢差を入力しただけで、寿命まで同じ幅でずらす必要はありません。

死別後の生活費を世帯生活費の0.65倍にするのも、このサイト独自の仮定です。公的制度の基準ではありません。2人から1人になっても住居費や光熱費が半分にはならないと考え、月25万円なら16.25万円として計算しています。この倍率が合わない世帯では、表示される資産推移も変わります。

65歳以降の遺族年金は、足し算ではない

もう一つ、年齢差と一緒に見ておきたいのが死別後の年金です。配偶者が受け取っていた老齢基礎年金は、亡くなった後にそのまま引き継がれるものではありません。残された人は自分の老齢基礎年金を受け取ります。

名前の似た「遺族基礎年金」は別の給付です。受給できるのは、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」で、子には18歳到達年度末までなどの要件があります。詳しい対象は、日本年金機構の遺族基礎年金の受給要件に載っています。

65歳以降に自分の老齢厚生年金と、配偶者の死亡による遺族厚生年金の両方を受ける権利がある場合は、次の順で調整されます。

まず、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3を基に、遺族厚生年金の額を計算します。65歳以上の配偶者では、その額と「その額の3分の2+自分の老齢厚生年金の2分の1」を比べ、高い方を使います。そのうえで自分の老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金は自分の老齢厚生年金に相当する部分が止まり、上回る差額だけが支給されます。日本年金機構の遺族厚生年金の年金額年金の併給調整で確認できます。

年額で例を置くと、最初の遺族厚生年金が60万円、自分の老齢厚生年金が50万円なら、もう一つの計算は「60万円×3分の2+50万円×2分の1=65万円」です。高い方の65万円から、自分の老齢厚生年金50万円に相当する部分が止まり、遺族厚生年金として実際に支給されるのは差額の15万円。自分の老齢厚生年金50万円と、自分の老齢基礎年金は別に受け取ります。自分の老齢厚生年金が高ければ、遺族厚生年金の支給額が0円になる場合もあります。

なお、遺族厚生年金は2028年4月から、60歳未満で死別した場合を中心に段階的な見直しが予定されています。厚生労働省は、60歳以降に受給権が発生する人は今回の見直しの影響を受けないと説明しています。若い時期の死別も含めて考える場合は、厚生労働省の見直し内容も確認してください。

当サイトのシミュレーターは遺族年金を資産計算に含めていません。上の到達年齢も、遺族年金を0円として出した数字です。受給資格や実額は加入記録、死別した年齢、家族構成などで変わるため、老後計画に入れるなら、ねんきんネットや年金事務所で個別に確認する必要があります。

年齢差は「いつ入って、いつ出るか」を見る

同じ資産と生活費でも、配偶者の年金が先に入る年、施設費が始まる年、1人分の生活費へ変わる年で資産曲線は変わります。今回の仮想世帯では年上のケースが早まりましたが、その結果だけを取り出して得だとは考えない方がよさそうです。

配偶者との年齢差を「年上なら+」で入れ、ほかの条件はそのままで4種類のFIRE到達年齢を比べてみてください。次に施設入居年齢と想定寿命を変えると、どの仮定が結果を動かしているのか見つけやすくなります。

運営者は年金や金融の専門資格を持っていません。この記事は公的資料を確認し、このサイトの計算処理で試算した記録です。将来の受給額を保証するものではありません。

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